腱鞘炎で手首が動かせなくなったときのDTM。
この記事は、DTMテクニック集のカレンダー5日目の記事です。
DTMテクニック集のカレンダー | Advent Calendar 2022 – Qiita
概要
まず自分(MachiaWorks)はDTMでジャズやオーケストラ等細かく打ち込みを行うことで成立する楽曲を作っていました。
打ち込みにはマウスを用いて作っていました。
しかし、腱鞘炎(腕の腱に痛みが発生する)によってマウスを利用した作業ができなくなりました。
具体的にはマウスへの持ち替え、およびマウスクリックにおいて腱を利用するのですが、その作業自体の実施時に痛みが発生する為、マウスが使えないんですね。
このため、代替手段を講じて曲を作れる環境を構築しました。
当記事は、上記の確認履歴みたいな内容を記載するものです。
割とニッチですが、作業を手早く終わらせるという観点でも有用かと思います。
条件
マウスを使わずに操作ができる作曲環境。
意外とないもので、このために数年費やしました。(以前から腱は痛かったので方法を探してはいた)
下記は一通り試してみた結果を列挙してみたものになります。
手段(方法・ソフト・ハード等)
まずは現状を踏まえて利用できそうなものを記述します。
- キーボードの自作
自作キーボードってなに? (yushakobo.jp)
いきなりDTMと関係なさそうですが仕方ないです!これ必要だったので!
キーボードを操作するのに自分の指が長くないのもあり、遠くまで指を伸ばす際に手首に痛みが発生していました。
このため、小さいキーボードを作成することにしました。
自作キーボードを作るときによく使われるファームウェアは「マウス機能も兼ねることが」できるため、キーボードでマウスポインタを動かすことが可能になります。
この機能を使って今までマウスを動かして作業してた部分をキーボードへ置き換えることが可能になります。
おかげで、机の上には小さいキーボードしかありません。
とはいうものの、マウスを激しく動かすには指がついてかないため、できる限り操作をキーボード側に寄せていく必要があります。 - AbletonLive+操作周りのプラグイン
Ableton Live | Ableton
AbletonLiveというDAWはループする曲作るのに丁度いいんですが、それ以外にも専用のソフトでプラグインを作ることができます。
そのプラグインはDAWの深い機能まで弄ることが可能で、実際本体には存在しないはずのショートカットを作成することもできています。
自分は下記のプラグインを導入し、一部の機能をキーボードで行えるようにしています。
Futility v4 – full shortcut control over the selected track + floating track mixer (gumroad.com)
また、ピアノロールを利用した打ち込みについて、キーボードだけでノートの打ち込み・調整が可能です。
Live11になって、ノートのVelocityを数値入力で変更できるようになったため、この機能も利用しています。
オートメーションの書き込みについてはマウスを使う必要がありますが、これは上記のキーボードでマウスポインタを動かす機能で補完可能です。
キーボード側でダブルクリックを行いノードを挿入、その後右クリックで「値を編集」を選択し数値入力すれば簡単に値を調整できます。
参考資料:(キーボードのショートカット等を自分でまとめたものです)
AbletonLive-ハードコアPCキーボディストのためのショートカット+Tips – MachiaWorks (machiaworx.net)
かくして自分は楽曲制作をキーボード1個で行うことが可能になりました。
なお、VSTプラグインはほぼ使ってません。(一部楽器や録音した後のエフェクト等で使うくらいですかね)
これは、VST/VSTiは「マウスを使うことが大前提になっているUIが多い」からで、MIDI CCを受け付けるVSTではない場合、DAWとは別プロセスのUIを弄ることになります。
結果、VSTに操作を取られてDAW側のショートカットやDAWへのフォーカスが有効にならない等の弊害に遭遇することになります。
よって、上記の状態を回避する目的で、常時ハード音源やViennaEnsembleProを起動の上、MIDIOUTでコントロールして曲を作ってます。
(正確には、スタンドアロンのエディタを起動し、ハード音源をコントロールするというアプローチしてます。これであればDAWとVSTの相性問題に悩まされずDAWのみを集中して操作することができます)
楽器の差し替えが必要な場合は打ち込みがほぼ終わってその後で変更するときくらいですかね。 - M8Tracker(Headless環境)
Dirtywave
M8Trackerとは、マイコン上で動く作曲環境・ソフトウェアになります。
シンセサイザーとサンプラーを利用可能で、SDカードにデータを書き込む形になるため、大量に音ネタやInstを使うことができます。
動作は専用設計のハードウェアと汎用マイコン、どちらかで動かすことになります。
ハードウェアについては現在のドル高のおかげで結構な価格になっていますが、スタンドアロンで動かせるのでお勧めです。
逆に、汎用マイコンで動かす場合、PCへの接続が必須になってきます。
これはHeadless環境と呼ばれるもので、画面がない代わりにマイコンとPCを接続すればハードウェアと同様の機能を利用できるという優れものです。
操作についてはキーボード(ボタン)だけで利用可能なので、現状の小さいキーボード使う身としてはちょうどいいのです。
下記URLみればHeadless版もどうにか動かせると思います。必要なのはマイコン。
Dirtywave/M8HeadlessFirmware: M8 Headless Precompiled Firmware (github.com)
ただ最近Teensy4.1が在庫切れになっているので、今後購入が可能かは不明です。 - QY100
最近買ってみたんですが、意外と使いやすくMIDI出力を想定して使うのもやりやすいかと。
ヤマハ | QY100 – シーケンサー / リズムマシン – 概要 (yamaha.com)
専用のハードウェアで、ボタンもフル活用できるので作曲がし易いです。
ただ、ソフトウェアが古く、Windows10環境で使うには設定を工夫しないとダメなケースがあるので注意。
MAIN (charatsoft.com)
また、ユーティリティソフトから出力したMIDIファイルは正常にAbletonLiveで読み込めないので、一度DominoやCherryに読み込んでエクスポートするか、MIDI INに直接MIDIデータを流すか、のどちらかになるかと思います。
惜しいのが、もう販売終了しているので入手するのも困難というところですね。(どうも2014年位に終了したみたい) - OP-1/OP-1field
単独で運用できるシンセサイザー来ましたね。
試しに動かしてみたら腱鞘炎の条件にひっかかったので、ゆったりとパッド音色を鳴らすかシーケンサをメインに使うことになりそうですが。
他試してみたもの(いっぱいあるけど書けそうなものを列挙)
- 他のDAW
CubaseやReason、Bandlab等使ってみたけど無理でした。
また、MIDIキーボードについても演奏自体で痛みが走るので継続利用が不可能でした。 - ライブコーディング環境
yoppa org – 「ライブコーディングをはじめよう!」Sonic Piによるライブコーディング入門 – 美学校 Play the music プロジェクト 2018
文字で打ち込むのでキーボードだけで作業できる環境になります。
プログラムを書いて曲を作っていくイメージでしょうか。
ただ、ループを作るのには向いているけど、ソングを作成するのに向いてないです。
また、環境によって動作するしないが激しいため、常用するのが辛いですね。(Linuxがメイン
ただこれは自分で環境を作成するという手段はあったので、問題なければ自作でも可能なことは確認済みです。
試しにソフトを作ってみました。
re:code – Music Sequencer for Livecoding by machiaworx (itch.io) - Renoise
Home | Renoise
MIDI出力、CC入力についてはこれが選択肢として上がります。
VST絡みの問題がありまして、その場合操作の連続性は薄れることがわかったため断念。
ただ、ハード音源弄る前だったので、今のようにエディタをスタンドアロンで起動する形にすればもしかしたら有効かもしれません。
MIDICCもキーボードで入力できますし。 - BambooTracker
BambooTracker/BambooTracker: YM2608 music tracker 🎍🎋 (github.com)
キーボードだけでコントロールできることを確認済みです。
音色調整について、キーボードだけでやろうとするとタブ移動が必要なため時間がかかります。
それだったらキーボードでマウスポインタ動かして変更したほうが早いですね。 - Digitone
Digitone – Synth | Elektron
シーケンサ打ち込むにはかなりベストな選択肢です。
以前まではトラック単位でしか入力できなかったけど、最近になってようやくソングモードが追加されたため、今後は曲作るのに最適なものとして取り扱うことが可能と考えます。
何より打ち込み用にキーが存在するため、打ち込みがし易いです。
ただ、シンセの音しか入ってないのと場所取るので作業には工夫が必要ですし、何より外で作業はできません。
また、機能としてはシンセ4tr+MIDI4trしかない(シンセは音色差し替え可能)なので、制約は存在することに注意してください。 - Domino
https://takabosoft.com/domino
リストエディタから入力する形にすれば、かなり快適に譜面の打ち込みができます。
DAWとの連携が実質うまくいかないケースがあるため、簡易な環境で打ち込んだあと、MIDI出力を行ってAbletonLiveにインポートができるものと考えます。
ただ、ノート挿入で同じノート番号が小節内にあった場合挿入自体できないことが発覚してます。ちなみにCherryだと問題なく入力可能です。 - Muse
思索の散歩道(Muse) (chobi.net)
よさそうと思ったんだけど・・・MML使う必要がありました。
泣く泣く断念。
一時期MMLも使っていたので、利用自体は問題ないんですが、
MMLは一部をループさせるのに向いてないんです・・・(記述に工夫が必要
同様の理由でテキスト音楽サクラ(テキスト音楽「サクラ」 (sakuramml.com))も利用を断念してます。 - KORG Gadget+Apple Pencil
KORG Gadget 2 – MUSIC PRODUCTION SOFTWARE | KORG (Japan)
iPadでも作曲できるんですが、物理ボタンがないと手触りで確認しづらいのが悩みでして・・・(目もよく見えてないので
とは言うもののApplePencilで腕の動きを補助できるかと思うのでこれ使うという手はありそうです。 - Sunvox+ApplePencil
WarmPlace.ru. SunVox Modular Music Studio
上記と同様。キーボードショートカットが充実しているため、これで使うのでもよさそうかなと思いましたが、モジュラー構成をどうやって作るか詰めきれてないので、ちょっと後回しになってます。
ただ、それだったらWindows版の方が良いのかもしれないです。
終わりに
ということでいかがでしたでしょうか。
割とニッチかつ誰も遭遇しそうもない環境かなとは思っていますが、
いつ何時今までの生活ができなくなるかわかりませんし、そういう時にできることはいくらかあるものです。
そういう時にこの記事みたいな内容で工夫でどうにかなるよ、という取っ掛かりになれば幸いかなと。